2019年08月10日

誰か「波止場のママ」を知らないか

1958年、私が18歳のとき、音痴は大したことではなかった。カラオケがないから、庶民は自分流で勝手に歌うことが許されていた。よく友人同士で気晴らしに歌った。上手な人は感心されるが、下手でも気にすることもなく一緒に楽しんだ。それぞれが勝手に歌って何の問題もなかった。楽しかったなぁ。

私たち10代の有職少年は、自由時間に友達同士で同じ歌を歌って楽しんだ。その時の一番人気は「波止場のママ」、”こんな酒場の片隅で♪”で始まる曲だった。少年たちの憧れは外国に繋がる海、そして波止場のママ、そんな時代があったのだ。

職場は男ばかりで女性との接点は食堂とか売店でしかない。とても愛想の好い売店の少女をデートに誘ったら断られた。こんな状況では女性と話したければ酒場に行くしかない。そこには「男でしょ貴方は海の男でしょ」と励ましてくれるママが居る。酒場では海の男の気分になって、景気よく飲んで売店の少女を忘れた。懐は寒くなったけれど、酔って心は温かくなる。

次に洗濯屋の少女に思いを寄せたが振り向いてもくれなかった。こんな時は酒場のママに会いたくなる。「うぶなのね貴方はわりとうぶなのね」と、優しい言葉をかけてくれる。そして雪国と言う素敵なカクテルを作るから飲んで忘れなさいと言ってくれた。カクテルは高かった、何時も飲んでいるトリスの十倍もした。

退屈したのでママの顔を見に行った。今度は振られた話はしない。ジッとママの顔を見つめていたら、ママはつぶやいた「つもる苦労を白粉に 隠す私じゃもう駄目ね」。海の男の気分でママを励ました。「生きなくちゃ貴方は強く生きなくちゃ」。

その夜、ママは珍しく酔っていいた。「アタシのどこが嫌なんだ。生きようと死のうとアタシの勝手だ」とか何回も同じことを言っては絡んできた。酔っていても勘定は正確、トリスのストレート、シングル1杯とハイボール2杯で340円。今までで一番安かった。

波止場のママ 唄:鶴美幸 作詞:森くにのり 作曲:下川博省 
1957年4月発売
1. こんな酒場の片隅で 寝てるふりして泣くなんて 男でしょ貴方は海の男でしょ 浮気な女の名なりとも波止場のママに聞かせてね
2. 捨てて気取ったその手紙 しわを伸ばしてどうするの うぶなのね貴方はわりとうぶなのね 昔の誰かを見るようで 波止場のママも泣けてきた
3. つもる苦労を白粉に 隠す私じゃもう駄目ね 生きなくちゃ貴方は強く生きなくちゃ 呑むのはいいけどぐれるのが 波止場のママはこわいのよ

どこのカラオケ店にもない。探し探し続けても未だに見つからない「波止場のママ」。誰か波止場のママを知らないか。
posted by 中波三郎 at 00:00| Comment(0) | あの歌この歌
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