2010年02月28日

シャルウィダンス?

歌とダンスが得意のAさんは私より7つ若い元同僚。彼から「面白い所に案内するよ。金はかからないから」と電話があった。好奇心もあって行くことにした。Aさんはよくダンスの話をするが踊っている姿を見たことがない。口ほどかどうか見てやろうと思った。

「ダンスだったら出来ないよ」
「いいのいいの、飲んで食べて1000円ポッキリ」
Aさんはバックを二つ持ってやってきた。 

「店に入るときこれ持ってくれない」
「何ですか。これ?」
「ダンスシューズさ」
「ダンスできないって言ったでしょう。靴も合わないよ」
「いいのいいの。これ持ってれば1000円だから」

入ってみると、意外にも小奇麗なところだ。天井のキラキラ光るライトがクルクル回っている。フロアの向こうにステージが見える。ソファに座り、やっと気分が落ち着いた。ビールを飲みながら話は弾む。瞬く間に1時間が過ぎてしまった。Aさんはキョロキョロ辺りを見渡したと思ったら、「ちょっと踊ってくるわ」と言って席を立った。

さすがはダンスの達人、さっと手を斜めに上げた格好などは、映画で見た「サタデーナイトフィーバー」の青年にそっくりだ。異変は、この後に起こった。さっさと帰ればいいものを一応、挨拶して帰ろうとと思ったのだ。

Aさんは女性を連れて来て踊ってやって下さいと言った。そんな風に聞こえたが聞き違いかも知れない。ともかく挨拶して帰ろうと思った。

「楽しかったよ。用事もあるし帰るよ」
「せっかくだから、帰る前に踊っていったら」
横で初対面のやや若い地味な女性が肯いている。
「ダンスはダメなんですよ」
「ブルースだから、ただ立っているだけでいいのよ」
スローな音楽が聞こえる。

私は30分間、この席でダンスを見ていたが、まるでダンスの練習場のようだ。立ち止まっている人などいない。だがビールを1時間半も飲んでほろ酔い気分だった。ほろ酔いはいけない。気が少しだけ大きくなり、ロマンチックな気分は更に大きくなる。しかも記憶にはちゃんと残るのだ。

私は予定とは全く違う行動に出てしまった。いろいろ失敗して終わった頃はとても恥ずかしかった外に出てホッとした。幸いだれも知った人に会わない。私が喋らなければ、何事もなかったのと同じことだ。知らない街はホントに有難い。旅の恥はかき捨てでいいのだ。

「ダンスはどうだった?」
「あれはいいんです」
「なに?」
「恥は書かないことにしています」
posted by 中波三郎 at 01:03| Comment(0) | その他