2008年06月08日

カラオケで喧嘩(あじさいの雨)

カラオケボックスに入ったトタンに楽しい気分も吹き飛ぶような「事件」が起こった。原因は1匹の小さなハエ。あちらこちらに飛んだあげく入口の近くにポッと止まった。

追い出してやろうと思ってドアを開け、止まっているハエを帽子であおった。ハエは出ないで飛び回った。そのとき「なんでぶっつぶさないのよ」と、険のある声がした。振り向くとAさんが目をつり上げて、私をにらんでいる。

ハエはAさん側の壁に止まった。情け容赦なく紙を丸めて思いっきり叩いた。少し外れたがハエは床に落ちてもがいていた。Aさんは「ぶっ殺してやる!」と言いながら思いっきり踏んづけた。

「殺さないで拾って外に出せばいいでしょ」
「なに言ってんのよ。手が汚れるじゃない」

こんな状況の中で私が歌う順番が来た。少し意地悪してやろうと思い、渡哲也の「あじさいの雨」を歌ってやった。

「弱いからだに〜 かさねた無理を〜♬」
と歌いだすと、とたんにAさんが横やりを入れた。
「弱い女がそんなに好きかい!」
実は次の歌詞を聞かせたいのだ。Aさんにピッタリだ。
「かくしていたのか 濃いめの化粧〜♬」
奇麗と思っていたが、ハエの一件で印象は変わった。
「強い女は嫌いかい!」

少しは静かにしてほしい。ハエを一匹殺したくらいでそんなに強がることはない。バカらしい。
「いくども色を変えながら枯れて淋しく散ってゆく〜♬」
私だって皮肉の一つも言ってやりたい。

帰りはAさんが最寄の地下鉄駅まで送ってくれるが。ハエの一件が尾を引いているようだ。いつもなら「乗って行かない」と声をかけてくれるのだが、この日は違った。  

「バス何時?」とAさん。
「まだ42分あります。乗せてくれない」
と、Aさんに頼んでみた。意外にもこころよく乗せてくれた。車の中でAさんがいった。

「歩くの嫌なの?」
「嫌じゃないけど、お名残惜しいでしょ」
「そう。私もお茶でも飲もうかと思ったのよ」
それでバスの時刻を聞いていたのだと分かった。

「ハエをぶっつぶせ」と怒ったのは本気だ。だから、それを引きずって帰りたくなかったのだと思う。長い付き合いだが、二人でお茶をと言われたのは初めてだ。

Aさんは決して謝らない。その代わり命令を下す。「いろいろありましたが、丸ごとひっくるめて付き合ってください」。後でメールにこう書いてきたので、思わず笑ってしまった。
posted by 中波三郎 at 00:00| Comment(0) | あの歌この歌